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バブルだキャビアだニューヨーク
 成金という言葉があるが,ひがみも含めてあまり誉め言葉としては使わない。

バブルの頃は,この成金または俄か成金が街にあふれ,高級レストランやシテ

ィーホテルのスイートルーム、グリーン車に3ナンバーの車と,とにかく高け

ればイイみたいな時代があった。
 
 今となっては現実味のない昔話だが,現在でもアメリカでは成金が闊歩して

いる。世紀末を迎えて多少の陰りが見え始めたとはいえ,人々は空前の好景気

でお金をばら撒いている。
 
 そんなアメリカはニューヨーク,高級ホテルとして名高いウォルドルフアス

トリアから歩いてすぐのところに,これぞバブルというレストランを見つけた。
 
 キャビアロッソというレストランは,その名の通り,かの世界的美味キャビ

アの専門店である。私達一般ピープルには,キャビアはリッツの上に乗ってい

る,数の子くらいの大きさの小さな黒い粒,くらいにしか認識がないが,あれ

はほとんどがまがい物で,チョウザメ以外の,何か他のさかなの卵らしい。ス

ーパーで売っている1,000円未満の瓶も偽物だ。味もただ塩からいだけ。
 
 メニューを渡されたのだが困った。何がなんだかわからない。キャビアにも

いろいろな種類があったのだ。そんなの当たり前だろうと思うかもしれないが,

考えてもみて欲しい。寿司屋でいくらを頼むときに,いちいち種類を告げるな

んて事はないではないか。
 
 メニューにはベルーガとかオッセトラとかセブルーガとか、とにかく英語と

は思えない未知の単語が並んでいる。おまけに量が50gとか125gとか書

いてあるが,どのくらいが適量かもわからない。
 
 こういった場合訊くしかない。言葉が通じればだが。

 なんでも同じチョウザメでも,その大きさによってキャビアの種類が違って

くるらしい。やはり大きな親から摂れたものの方が美味しいらしい。したがっ

て高い。量は一人50gが適量であろうとのこと。
 
 思い悩んでいると,よほど金がないと思ったのか,つぶれて商品にならなく

なった,言ってみれば割れせんべいのようなお買い得品があるという。しかし

バブリーニューヨークで割れせんべいはちょっとさびしい。ここはひとつわい

わいと何種類か食べてみよう。
 
 5人でテーブルを囲んでいたのだが,最高級というベルーガを50g,ゴー

ルドオセットラを125g,オセットラを50gオーダーする。ボーイのアド

バイスもあったのだが,高い順に3種類頼んだ。気分は成金である。ボーイの

態度にも変化がみられる。どうも極東の地の財閥の子息のグループだと思い始

めているようだ。
 
 オーダーを終えて店内を観察すると,内装は大変きらびやかで,なんという

かあまり落ち着かない。お客もウエストが100cm以上のデブ男が,絶対に

奥さんではないと思われる化粧の濃い女を連れている,そんなカップルばかり

だ。男はバレンチノのストライプのスーツを着て,なぜか禁煙万歳の国で太い

葉巻,やはりここはニューヨークの成金が来る店だったのだ。
 
 キャビア様が到着した。氷の上に瓶ごと置いてある。50gの瓶は,普段見

慣れている物の倍くらいの大きさだ。これにトーストとバターがついてくる。

もっといろいろな付け合わせがあるのかと思ったらこれだけだ。
 
 オニオンとか卵とかは一緒に乗せないのかと尋ねると,キャビア自体の味が

失われてしまうとの説明。なるほどと納得。
 
 小さいスプーンでザクッとすくい、トーストと一緒にバクッと食べる。贅沢

な味と気分が口一杯に広がる。一粒一粒が大きい。いくらのようだ。特にベル

ーガは,水飴のような色でプチプチしている。これはコレステロールが高そう

だ。
 
 キャビアはやはり前菜になるのだろうか,メインではシーフードプラッター

を食べるが,メインとは名ばかりで影が薄い。王者キャビアの後では何が出て

きても印象に残らない。ミスナントカと交際していた男がふられて,その後普

通のねえちゃんと付き合うも,最初の彼女のことが一生忘れられない,そんな

感じだろうか。経験ないけど。

 気になる値段だが,飲み物代,チップもいれて$687,一人当たり14,

000円くらいだった。一番高いベルーガが$100である。ヨーロッパの空

港の免税店で買ったら倍くらいする。
 
 高級なものであってもリーズナブル(適正価格)でなければ金を出さないと

いうことだろうか。バブルに浮かれながらも,アメリカ人はしっかりしている。

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